漕ぎ始めたら、遠くまで行ける
「いつかやらなきゃ」で止まっていた経営者が、AIを日常に組み込むまで
課題
- 2名体制の会社として、少ないリソースをAIで補いながら出力を最大化する必要があったが、独学では「何が分かっていないのかが分からない」状態だった
- ChatGPTなど対話型の使い方から先に進めず、玉石混交の情報から有益なものを選び分けるコストが高かった
- 本業が忙しく、「落ち着いたらやろう」という後回しが半年から1年続いていた
解決策
- 事前ヒアリングを踏まえたオーダーメイドのカリキュラムで、RAGやCursorなど仕組みの理解から段階的にClaude Codeへ
- 質問し放題と、分からないことをさらけ出せる雰囲気での伴走
- 答えだけでなく背景の考え方を共有し、受講者の自走・卒業をゴールに設計
効果
- 散らばった情報の統合・整理・管理をAIに任せ、長期案件の文脈や会社ごとの用語定義を保持できるように
- 人間ならではの高度な判断へ、タスクの比重をシフト
- AIに触れることが特別なタスクではなく日常になり、後回しの堂々巡りから脱却
インタビューを受けてくれた方
吉田将英様
吉田様:トオクは、企業の経営層やリーダー層に伴走して、その法人が先々まで社会に必要とされ続けるための存在価値を、言葉として決め切るところまで一緒にやる会社です。パーパスやミッション、ビジョン、行動規範といった、その法人ならではの価値を言語化したり再定義したりすることを起点に、ブランディングという領域でデザインや表現、言語の部分までを手がけています。
社名の由来でもある「遠望と対話」を掲げていて、人は放っておくと、思い込みやバイアス、日々の引力に引っ張られて、近くばかり見てしまう。遠くは、一人では見えないんです。だから対話で見る。社名の「トオク」は、そのままその意味です。だから業務としては、幅広い情報収集や、世の中の先端で何が考えられているかを日々押さえて、自分の考えを構造的に蓄積し続けることが欠かせません。
会社としては、2人でやっている本当に小さな所帯で、立ち上げて間もないというのが大きなファクターです。所帯が小さいことのメリットである軽やかさ、意思決定の速さ、小回りを活かして、大手さんとは違う価値を届けられるはずだという仮説がある。ただ、小回りと言えばかっこいいんですが、人的資本が2しかないんですよ。マンパワーの少なさをそのまま弱点にせず、AIの力で補いながら、軽やかさをキープしたまま出力を最大化するにはどうするか。これが常について回る問いでした。
吉田様:ChatGPTを触り始めたのは早い方だったと思いますが、この3年ほど、ずっと対話型のままでした。ChatGPTが長くて、その後Geminiも使い始めて、今年の3月にようやくClaudeのアカウントを作ったんですが、僕は「ターミナル画面恐怖症」だったんです(笑)。Claude Code=ターミナルという思い込みがあったので、ターミナルを叩かなくても使えるという噂を頼りに、Claude Coworkから触り始めました。Xで流れてくるそれっぽい活用術を集めてやってみたんですが、すぐトークンが枯渇するし、思ったアウトプットは出てこないし、結局対話型っぽく指示を出している感じがする。根本からゲームのルールを理解できていない気がしていました。
そもそもAIを使いこなせないと、さっき言った「少人数で出力を最大化する」は叶わないんですよね。うちのような会社は、大手企業のビジネスパーソンの倍とか3倍の水準でAIリテラシーを日々培って、ようやくトントンだと思っています。次元の違う学習強度が必要なのに、対話型からエージェント型のAIに進もうとすると、何が分かっていないのかが分からない。その「分かっていなさ」を自己解決するのは、できなくはないけれどカロリーがすごくかかるし、かえって遠回りになると思いました。
今はAIについて書けば注目される時期なので、それっぽい情報が大量に流れてきます。玉石混交の中から玉と石を選り分けて独学するのは、理論上はできると思うんですが、本業が忙しいわけですよ。選り分けるコストを本業の傍らで払おうとすると、直近でお金を生む本業が優先になる。「忙しい波が去ったらAIをやろう」と言って半年経つ、というのを繰り返していました。落ち着いたらAIをいじろうと言っているあなたが落ち着く時は、永遠に来ないんです(笑)。
吉田様:知ったきっかけは、AIコーチングを受けていた経営者仲間のFacebook投稿です。「なんですかそれ」とコメントしたら繋いでいただけました。
大きかったのは、プランがオーダーメイドだということです。世に落ちているベストプラクティスをついばんで挫折した身としては、世の中にある情報と、僕の事情や使いたい使い方との「間」の接続がすごく肝で、そこをオーダーメイドしてくれそうだと思ったのが大きかったですね。
あとは質問し放題というところ。「何が分からないのかが分からない」というメタな分からなさを解消する、僕のハーネスになってくれそうだと思いました。それと、怖くないと思ったこと(笑)。怖いとか厳しいとか、「なんでお前は分かっていないんだ」とか、そういうことをされなそうなWolkinさんのお人柄も決め手でした。
吉田様:自分の業務に近い領域でパフォーマンスが上がる実感が一番あったのは、Claude Codeに入ってからです。ただ、じゃあ最初からClaude Codeで良かったかというと、全然そう思いません。ベクトル検索とは何か、意味を多次元で扱うとはどういうことか、といった理屈を、講義で取り扱ったCursorやDifyを通じて理解できたので、「こういう仕組みだからこう動く。ということは、こうすればこうなるはず」というメタな応用の土台ができました。僕は理屈が分かっている方が、後々の自己学習に蓄積が効くタイプなんです。
正直、最初の2回は地味な講義だったなと思います(笑)。手応え重視で派手なことをやらせた方が顧客満足度は上がりそうなのに、地味なところから勇気を持ってカリキュラムを組んでいただいたのが印象に残っています。
その汲み取り力は、始まる前の2回のヒアリングが効いていると思います。いきなりカツカレーを出してほしい人もいれば、僕のようにコース料理で組み立ててほしい人もいる。お客さんに応じて料理の組み立てを変えてくれるはずなので、これから受ける方には、最初のヒアリングと提案の2回を使い倒すことをおすすめします。僕も、自分の仕事のことや自分のタイプのことまで、散々話しましたから。
吉田様:自分がAIを使ってどうなりたいのかを、なるべく伝えようとしていました。僕自身が伴走支援をする側でもあるので分かるんですが、ゴールを分かち持てると伴走は格段にやりやすくなるんです。
「何が分からないのか分からないんだから、言語化なんてできないじゃないか」という矛盾は当然あります。でも、そういう時こそ恥ずかしがらずに、「この人AIを全然分かってないな」と思われることを恐れずに、魔法の杖くらいの過剰な期待で、できるできないに関係なくとにかく言う。Wolkinが怖くないというのは、ここに生きてきます。マウンティングしてくる相手だと「馬鹿だと思われたくない」が働いて言えなくなりますが、AIが分かっていない自分をさらけ出せる空気がある。言うだけ言えば、AIが得意なこと・苦手なことをちゃんと教えてくれて、期待しない方がいいことも本編で回収してくれるので、あとは寄りかかればいいんです。
吉田様:大きく変わりましたよ。使い方として大きいのは、散らばっている情報の統合・整理・管理です。僕の仕事は、点でパフォーマンスするというより、短くて2ヶ月、長いと1年2年伴走する仕事です。「何回か前のミーティングであの人がこう言っていた」とか、一度決まったことの経緯とか、そういう蓄積が効いてくる。しかもクライアントによって業界が全然違うので、用語も変わります。「コンセプト」という言葉ひとつ取っても、会社ごとに粒度と定義が全然違う。同じ言葉を違う意味のまま使って走ると、プロジェクトは必ず蛇行します。だから蓄積が効くんです。「最初に出ていたあの話はどこへ行ったんだっけ」となる。これを人間がやると記憶の才能が要ることになってしまうんですが、AIならしっかり組んでおけば大丈夫になる。そういうことを脳の容量からバーンと外せたのが大きいです。
構造化して、簡単なドキュメントに落とすところまでできるようになりました。最初にお話しした「自分の考えを構造的に蓄積し続ける」というのは、うちにとって業務の一部ではなくて、売り物そのものなんですよ。だからAIに投資したのは、効率化のためというより、売り物の土台に手を入れたということなんだと思います。格好つけて言うなら、人間ならではの方向に自分のタスクを振り分ける割合が全然変わったので、ヘルシーです。
吉田様:どの瞬間ということではないんですが、Wolkinも試行錯誤の途上にいるという感じを、そのままシェアしてくださったのが、僕はむしろ良かったです。「こういう時はどうすればいいのか」「こういうことは可能なのか」と聞いた時に、「これはこうです」という断定をほぼされない。いろんな方法がある中で、過去にはこうやっていたけれど今はこれに行き着いている、でもこれからどうなるかは分からない、という答え方をしてくれるんです。
答えは当然いただいたんですが、答えそのものより、その答えの背景にどういう考え方があるのかの方が、自走には役立ちます。最初のゴール設定の時に、「自立して自己学習を回して、卒業できるのがゴール」と置いてくれたじゃないですか。Wolkin漬けにして「私たちなしでは生きられない」状態にするのではなく、「また来てね」ではなく「もう来なくて大丈夫」がゴールだという。その考え方が滲んでいる問答は、よく覚えていますね。
吉田様:「いつかやらなきゃ」と思いながらぐるぐるして後回しになっていた、喉のつかえのようなものが、ガンと動いた感じがあります。今年最大の懸案でしたから。
AIは終わりなき道だとは思いますが、自転車は漕ぎ始めが一番重いんですよね。一番トルクがかかる重いところを、一緒にペダルを踏んでいただいた。実際に回り始めて、今は慣性が効いています。もう怖くないし、億劫でもない。
以前は「AIに触る」という特別なタスクの時間を確保できなくて堂々巡りだったのが、パーソナルジムに通うように時間を取ることで、トルクが回るところまで漕げました。ここまで来ると、個別にAIの時間を捻出しなくても、業務や生活の中で触りながら自己学習が回っていく。もう1段レベルを上げたければ集中する時間も要るのでしょうけど、動き出した自転車を漕ぎながら、もっと先まで行ける感覚があります。だから、時間を捻出できないと思っている方、漕ぎ始めの重さを感じている方には、すごくおすすめです。