あえて残す"属人化"をAIとどうデザインするか
ワンメディアがCursorで広げたAI活用の可能性
課題
- 社内業務が人力依存で属人化のリスクを抱えていた
- ChatGPTに壁打ちする以上のAI活用が進まず、利用方法の広がりや効率化が頭打ちになっていた
解決策
- 3ヶ月のハンズオン支援を実施し、経営陣がCursor・n8nを学びながら実装
- 質問対応や設計アドバイスを通じ、「内製化」をゴールとしたスキルインストールを実現
効果
- 属人化していた社内業務をAI+自動化基盤でAIに任せられるようになった
- 経営陣自らが週2〜5時間のAI開発を行い、AI化の勘所をつかめるようになった
- Cursorの利用を通じ「このシステムも自分たちで作れるかもしれない」というワクワク感が高まり、将来の自社プロダクト化に向けた展望が生まれた
インタビューを受けてくれた方
余頃沙貴様
余頃様:ワンメディアは、クリエイティブ制作業および広告代理店業を主軸とする会社です。ショート動画を軸としたSNS広告の企画・制作・配信コンテンツ、インフルエンサーキャスティングなど、多岐にわたる制作案件を扱っており、クリエイティブ部分においては差別化や付加価値が非常に重要だと考えています。
これまで、クリエイティブ部分そのものにはAIをあまり活用しようとは思っていませんでした。というのも、クリエイティブの領域は柔軟性や人の感性が求められ、差別化の肝となる部分だからです。だからこそ、その差別化に時間を使えるように、その他の定型的・繰り返しの業務をAIで効率化できればと考えていました。
余頃様:最初の一歩はDeepResearchでした。個人で課金して試してみると、営業リサーチやキャスティング候補の探索に明確な効果があり、全社で導入を決めました。また、社内では月1回、有志でAI勉強会を行っていて、"こういうプロンプトだとうまくいく""ChatGPTでこんな使い方を試した"と共有する機会を設けています。
3ヶ月ほどで皆がAI活用に慣れてきてはいたのですが、実際にはアイデア出しや素案作成など"代替可能な領域"にとどまっていて、ワークフローに組み込んで業務効率が劇的に変わるところまでは進んでいなかったんです。ただツールを単発で入れるだけでは広がりに限界があると感じていました。
また、AIと会話するにもトレンドをキャッチアップするにも時間的なコストがかかるし、大幅な効率化になるかどうか疑問を感じることもありました。特に、メインで使っていたChatGPTは会話がクローズで汎用性や知見の共有がしにくかった。気がつくと、私自身が"AI担当者"のような役割になってきて、「アウトプットを出さなければ」というプレッシャーを感じることもあり、本来業務とのバランスが崩れていた部分もありました。
余頃様:より本質的に、自分たちでAIを組み込んだ"仕組み"を作れるようにWolkinに相談しました。AIの進化は非常に速く、自身や現場でベストプラクティスをキャッチアップするのは時間の制約的にも難しいですよね。だからこそ、トレンドを常に追っているWolkinのお2人に依頼することがベストだと考えました。実際に、2人のAIに関するトレンドキャッチアップ力や、それを惜しみなく伝えてくれる姿勢をよく知っていたので、依頼を決めました。
相談する前後で、チームの中でディレクター役をしていたメンバーがライフステージの変化で退職したことが、属人化のリスクをより身近に意識するきっかけにもなりました。
AI化の一歩として、SNSで活動するインフルエンサーをクライアント要件に沿って提案するキャスティング業務から取り掛かろうと考えました。この業務のフローやデータは社内で整理してきた背景があり、この領域については属人化させることなく対応が可能なのではないかという期待があり、この相談をWolkinに持ちかけたのが発端となりました。
余頃様:3ヶ月間、私と制作チームをまとめる執行役員の香川が中心になってCursorやn8nを学びながら実装を進めました。最初の1ヶ月は要件を言語化してデータの設計を行い、2ヶ月目で軽量のプロトタイプをどんどん作り、3ヶ月目で運用に耐えられる形に仕上げていきました。
Wolkinは常にオンラインで伴走し、詰まったら一緒に解決してくれました。「ここはAIでいける」「ここは人がやるべき」という切り分けを実務レベルで示してくれたのもとても心強かったです。中薗さんが自身の画面を投影しながら私たちのトラブルシューティングを行うプロセスを実際に見て、自分にも活かせると思えたのでハンズオン型で教えてもらえたのはやはり良かったですね。
特に、今回の支援設計で良かったなと感じているのは、キャスティング業務の自動化という短期的な目的を重視しながらも、ワンメディア全体の事業ゴールや将来の課題から逆算して設計してくれたことです。この目的を導入できれば、ほかの業務にも転用できる拡張性が非常に高い設計がなされていたと思います。
余頃様:一番大きかったのは、Cursorを使えるようになったことです。文脈を理解してコードを組み立ててくれるし、知見やファイルをプロジェクト内に蓄積できる。使えば使うほど"作業空間が育つ"感覚があって、「世の中のシステムも自分たちで作れるかもしれない」と想像できるようになりました。これは大きな進歩で、純粋にワクワクしましたね。
レクチャーを受けてからは、記帳ツールのAPIを叩いてバックオフィス業務を効率化したり、SNSのデータを収集してレポーティングの素体を自作するなど、以前は外部依存だった領域に自分たちで挑戦できるようになりました。こうした取り組みを通じて、経営陣が週2〜5時間開発に取り組む習慣も生まれ、AIにまつわる勘所が育った感覚があります。
余頃様:焦らずに、まずは軽量に繋ぐことを積み重ねたいです。BigQueryやn8nでデータやツールを横断的につなぎ、レポーティングや意思決定のリアルタイム性を高める。将来的には広告レポーティングなどを自社プロダクト化して、お客様に新しい価値を提供することも視野に入れています。
ワンメディアとしては、属人化を完全に排除するのではなく、"あえて残す属人化"をどうデザインするかを大切にしていきたいとも考えています。AIに任せる部分と人に任せる部分のバランスをとることで、クリエイティブの濃度を高めていけると考えています。
そして「自分たちでも作れる」という実感を社内に広げられるといいなと思っています。AIが最初の一歩を踏み出し、人が価値のコアを磨く。この循環を定着させれば、属人化を下げながらクリエイティブの密度を高められる。そういう組織を目指していきたいです。