農業×AIで、地方からトップを取る
北海道の放牧企業ファームエイジが、自走するAI開発チームを内製化するまで
課題
- 社内に開発チームがなく、ソフト開発は外注に頼らざるを得なかった
- 経営層は個人でAIを使っていたが社内には普及せず、エンジニアと非エンジニアの「対話」が成立していなかった
- 農業・酪農はAI活用が極端に少ないスーパーニッチ領域で、自社で内製化できるという確信が持てなかった
解決策
- WolkinのAIコーチングを導入
- Dify・RAGを体感する基礎から、Cursor・AGENTS.md・Skills/Hooks・承認ゲートまで、「AIに任せきりにしない仕組み(ハーネス)」を習得
- 新人エンジニアを中心に、最終回は動物判定AIをゼロから立ち上げるライブデモまで到達
効果
- 「壁打ち止まり」だったAI活用が、ワークフローを組んで資料・ドキュメントを生成する実務レベルへ
- エンジニアが自走し、リリースから「実際に使われる」までを体験。チーム開発と原理原則が根づいた
- Cursor導入で開発スピードと品質が向上。コーディングルールとPR運用で「個人のノウハウ」がチームの標準に
インタビューを受けてくれた方
髙田健次様
ラフィフ・ラマダン様
「FAXの世界」から、自社でAIをつくる側へ
髙田様:生成AIといっても、いろいろあるんですよね。社内でChatGPTを使うとか、相談しながら資料をつくるとか。そういう使い方は前からありました。
一つ大きかったのが、自社で開発をしているジュニアメンバーであるラフィフがいて、もともとコードのなかで生成AIを使っているものがあったんです。そのパーツをどう活かして、どう伸ばしていくか。今回はそこに本格的に取り組んでみよう、という流れでした。
髙田様:どんなソフトをつくれば農家さんが使えるかといったような企画はもともと自社でやっていたんです。ただ、それを形にする人が社内にいなくて、外注に頼っていました。
そこに、さっき話したエンジニアが入ってきたんですね。一緒にやっていくなかで「これは可能性があるな」と感じていました。以前は、複数のエンジニアがいないと開発は難しい、という世界だったと思うんですが、海外の経験がある人間から「いろんなことができるよ」という話を聞いていて。外の情報もどんどん入ってくる。
最初は100%自社でなくてもいい、外部に委託するにしても、まず"話せる段階"になろうと。何も知らないまま提案を受けるのではなく、対話ができる状態になる。それが第一ステップでした。その先の第二ステップとして、「もっと自社で内製できるんじゃないか」と思ったんです。
個人で使えても、「会社として」は別物だった
髙田様:正直、個人レベルでした。私自身はいろんなツールを使っていて、情報もキャッチアップしていたんですが、それが社内に普及しているかというと、そこまでではなくて。
エンジニアについても、どのレベルなのか私には分からなかったんです。エンジニアリングそのものが分からないので。そうすると、エンジニアを育てることもできない。強くしてあげられない、という感覚がありました。
そこがWolkinと関わることで、ある程度「どうエンジニアを育てていけばいいか」が見えてきた。エンジニアと非エンジニアが対話できる状態に近づけたんです。企画側にいると、エンジニアが何をやっているか分からない。コードは見えても、つくったものをエンドユーザーがどう使うかが見えない。逆に非エンジニアはユーザーの使い方は分かるけれど、どうやってつくっているかが分からない。その間をマッチングしてもらえた感覚です。
ラフィフ様:半年前は、AIといえばChatGPTとGemini、Claudeでした。ブラウザでアクセスして、「これはどうやりますか?」と直接質問するだけ。それがメインの使い方でした。
でも実は、AIはそれだけではなくて、CursorやGitHub Copilotのような、コードエディタと連携するAIが使える。それが新しかったです。Cursorの存在自体は知っていましたし、GitHub Copilotも無料版だけ使ったことがあった。ただ、無料の範囲ではすぐにトークンが消えてしまうので使える時間も回数も限られていて。なかなか本格的に使うことはできていない状況でした。
選んだ理由は「正直、勢い」。でも農業×AIならトップを取れる
髙田様:正直に言うと、勢いです(笑)。きっかけは、Wolkinさんが知り合いと共同で開催していたセミナーでした。そのセミナーでは、Wolkinのクライアントご本人が、どういう目的でどんなふうにAIを活用してきたかをお話しされるという内容で、それがすごくインパクトがあったんですよね。
農業や酪農って、言ってしまえば"FAXの世界"、電話で連絡するような世界なんですよ。スーパーニッチで、街なかのベンチャー企業がAIを使うのとは全然違う。社員もそういう環境でやってきた。だからこそ、「AI×不動産は地方だけでもトップになれる」という話を聞いたときに、「農業×AIでもトップになれるんじゃないか」と思ったんです。
私はもともと行動するのが好きなので、そう思った瞬間にやってみよう、と。正直その時点では、売る気とか明確な狙いがあったわけではなくて、たまたまのきっかけでした。
それと、個人的に取り組むときに大事だと思っているのが「お互いに成長する」ことなんです。Wolkinにとっても農業は新しい領域のはずで、見えない部分もある。でも、そこを一緒に解決していくことで、両者が成長できる。実際、やっていくなかでお互いに成長できたと思っています。短期的なアウトプットももちろん求めますが、それが終わってからも、これからもパートナーとして続けていける関係だな、と。
RAGの基礎から、ゼロからの立ち上げまで
髙田様:限られた講義のなかで柔軟に対応していただいて、「ここはこうしたほうがみんなのモチベーションが上がる」とか、メンバーが入れ替わったときに内容を変えるとか、その都度自社の状況に講義内容を合わせてもらえました。
私自身の目的の8割は、メンバーが成長して、自立して質問できるようになること。そこはまだ道半ばで、もっと到達できていたら、という思いもあります。
ラフィフ様:開発スピードは上がり、クオリティも上がったと思います。前はコードをコピペしてAIに貼り付けていたのが、リポジトリの中にファイルもフォルダもあるので、コピペする必要がなくなって、その場で回答が出てくる。質問するフローがシンプルになりました。
もう一つ良かったのは、コードの中で「上司向けに検討すべきポイント」を見つけられることです。意思決定のメリットとデメリットもAIと相談して、まとめて、それを上司に持っていく。そうすると、上司が判断もしやすくなることも学びでした。
髙田様:彼はエンジニアリングに関して、自分よりも専門的な知識を持っていますが、これまでは感覚で進めていた部分も多かったと思うんです。人からリアルに「こうしたらいい」と教わる機会が少なかった。そこを教えてもらえたのは良かったと思います。
リーダーになるまではまだ長い道のりですが、チームで開発するときの基本的な原理原則を知ることができた。視座が上がったと感じます。
つくったものにバグが多くて、社員から「ここを直して」と言われて対応する、ということが実際にあったんです。以前は「AIでつくってしまえば終わり」という感覚が彼のなかにあったと思うんですが、他のメンバーに使ってもらいながら、使い勝手を目の当たりにして、学びがあったようです。リリースできて、スポットライトを浴びて、最後に実際に使われるところまでを体験できた。それが大きかったと思います。
「AIは新しい部下と同じ」。ルールで個人のノウハウをチームの標準に
ラフィフ様:言語化が必要だ、というのが勉強になりました。コードは、人間にとってはあまり読みやすいものではないですよね。私は日本語の言語感覚もあまり上手ではないので、プルリクエストを書くときの説明は、AIに手伝ってもらっています。コードの意図を言葉にして残せるようになりました。
それから、コードのルールです。みんなが別々のAIを使うので、そのままだとバラバラになる。でもルールファイルをつくれば、どのAIも同じルールをfollowできるようになります。このファイル自体もAIとつくって編集しました。
ラフィフ様:ありました。編集してほしくない部分を、AIが勝手に編集したり削除したりして困ったことがあって。そのときにルールをつくったんです。「これは絶対に編集しない」とルールに書いておけば、全部のAIがわかるようになる。チームのみんながコードの全部をわかるわけではないけれど、みんなが使うAIはわかっている、という形にしました。
ラフィフ様:少し逆説的ではありますが、"AIを完全に信頼しない"ということです。失敗したり、勝手にコードを書き換えたりするケースがあると学んだので、それを前提に動くようになりました。期待することをちゃんと入力して、ミスしないようにリマインドする仕組みをつくる。新しい部下が入ってきたときと同じですね。
「壁打ち」から「AIに考えてもらう」へ
髙田様:始めた頃は、今と比べてAIエージェントみたいなものがまだ少なかったんですよね。そこは新しい発見でした。それを軸に、Claudeのような新しいものが出てきたときに、自分のなかでどうキャッチアップして、うちでどう活かしていくか、と考えるようになりました。
使い方も変わりましたね。以前は壁打ちが多かったんですが、今はかなり使っています。座りながらAIに考えてもらう、という感覚です。ワークフローを組んで、各部署の資料を置いて、それをもとに資料やドキュメントを生成する。前はダウンロードして自分でPowerPointを修正していたのを、今は修正点をメモして投げるだけで、AIのほうを直していく。そういう使い方になっています。
髙田様:一つは、自社では育成できないスタッフを、育成面でサポートしてもらえたこと。これが大きいです。
もう一つは、AIって情報が多すぎて、普通は処理しきれないんですよ。それを、Wolkinがあらゆる情報のなかから精査して提供してくれる。最先端の情報を、です。これはすごく助かっています。
農業×AIで、地方に人が残る未来を
髙田様:AIに関して言うと、やはり「会社として」もっと使っていきたいですね。自分は使っているけれど、全社として使うのは結構難しい。考え方の違い、セキュリティ面、レベル感の違いもある。でも、それを活用できれば、ある分野では仕事の生産性が何倍にもなる。
事業としては、酪農の分野に価値をつくっていきたい。酪農家は毎年4%くらい減っているんです。酪農は地方の大きな産業で、その衰退は地域そのものの衰退につながる。だからこそ、テクノロジーで新しい成長をつくって、新規に酪農を始める人を増やし、地域に人が残る状況をつくりたいと思っています。
髙田様:スーパーニッチな中小企業がどう生き残るか、と考えたときに、たとえ経営者本人がAIを苦手だとしても、経営陣のなかにAIに詳しい人やチームがいるだけで、大きく変わると思うんです。できれば、それを現場のレイヤーまで落としていく。
社員全員が、というのは難しいかもしれない。でも、そのきっかけとして取り組む価値は十分にあると思います。まずは、とりあえず使ってみること。そこからだと思います。